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  • 孫子の兵法(1)非戦

    世界最古級の戦術書が述べるところの最大のテーマは非戦ではないかと思う。

    ”兵法”とあるから如何に戦うかという話になりがちだけれど、ことの本質は違うと思う。

    どんな戦も始まる前から始まっている。

    ほんとのほんとに殺し合いになる前から始まっている。

    できれば、その殺し合いになる前にその殺し合いを回避する方法を模索する。

    『外交』だ。

    できるなら、双方の国民が誰ひとり死なずに解決できれば、それに越したことはない。仮に斬り合い撃ち合いになったとしても最小限の被害に留めたい。

    それは最終的に勝っても負けても被害を最小限にしないと勝ったとしても自国民が大量に死に、街も破壊されてしまっては負けた国を占領するまで手が回らないし、負けた国から何かを奪うために戦争を仕掛けたのではなかったか。それなら、負けた国を完全に駆逐してしまってはやはり復興に手がかかる。

    自国も敵国も傷だらけでは復興も何もあったものではない。

    日本神話に出てくる戦はどこかのんびりしていて、殺し合いをせずに譲り合いとか同盟とかによって共同して国土を発展させましょうという形が定型になっている。

    事実はどうであれ(神話だから事実がどうとか議論しても仕方ないという考えもあるだろうけど、一応、私個人のスタンスとしては歴史的事実を何かしらの形で反映したものととらえています)、勝ち組の作った神話としては勝ち組によって国が繁栄した体でないと神話の存在価値もないから、その繁栄の背景は日本神話の場合、”非戦”だったのではないだろうか。

    いずれにせよ、孫子の時代から可能なら戦闘を避けたい意志は十分あったはずで、そのために考えられることは外交努力だったのだろう。

    当初は戦闘を避けるための外交であり、開戦となれば損害を最小限に終戦を迎えるため、戦争を終わらせるための外交だっただろう。

    歴史を見ても多くの戦争が泥沼化して先が見えない状態となり、両者がボロボロになって終わる。仮にどちらかの国力が優位であっても、やはり殺し合いをした後の終戦は難しいことなのではないか。

    長引けば長引くほど、終われなくなる。

    だから、回避できるものならしないに越したことはない。

    それが『孫子の兵法』の根底に流れる最大のテーマだと思う。

  • 機動戦士ガンダムのテーマ

    根底にあるものは「非戦」だと思う。

    そして戦争に善悪も正義・非正義もないということ。

    それまでの戦いがテーマにあるアニメ(特撮でもいいんだけど)では正義が悪を挫くことになっている。

    ガンダムを見てその形式に当てはめる人はほとんどいないんだけど、興味のない人があれを見たときに正義(白いモビルスーツ)が悪(角の生えた赤いモビルスーツ)を倒すストーリーに見えるらしい。

    それを聞かされてハッとするのが、ガンダムを最初から見れば当たり前なのかもしれないけど、味方にも敵にも正義があって、戦う理由がある、しまいには軍とか国とか組織のイデオロギーだけでなく、個人個人に戦う理由があるということに気付かされる。

    今となれば、あれが大人のアニメとなったことは誰もが認めることだと思うけれど、始まった当初は子供のアニメだったわけでさ。

    だから、敵と味方はあるんだけど、イイモンとワルモンはないんだ。

    ドズル中将閣下は悪人面だけど、子煩悩に描かれていたし、戦う理由があった。シャアは私怨のため、父の敵討ちのため、敢えて敵側の軍人として敵さえ利用して、敵を討つことに情熱を燃やしたし、彼にしかわからない理由があったんだ。妹すら理解できない理由がね。なんだったら、ザビ家にだって、ジオン・ダイクンを消して簒奪した理屈がある。良いか悪いかの二極でとらえることは無意味なんだ。

    故に戦うことも虚しさが漂う。無意味だとは言わない。今言ったようにそれぞれに理由があって、それぞれの人生の中でやるしかなかったんだろうから。でも、それぞれに訳があるからこそ、議論にもなり得ないし、理解し得ない。

    ただ、理解しあえないよね、おしまい、とはならなかった。おしまいなら、殺しあうことをこれからも続けていくし、非戦とは言えない。

    ニュータイプはもとは宇宙に出た人類が上下左右のない空間認識を鋭くしていった覚醒した人類という設定から始まったのだと思う。徐々にひととひとの心に焦点が向いた。愛とか情のようなものとはちょっと違うと思う。”認識しあう”くらいの感じか。face to faceの認知ではなく、空間や時間を飛び越え始める。ここだけ聞くとエスパーのようなもの?とブライトさんに問い質されそうだけど、誰もが覚醒しうる。

    アムロは覚醒した特別な天才とみることもできるけれど、普通のメカマニアが宇宙とガンダムという最新鋭機器と戦争と強敵との遭遇と…いろんなものが揃えば覚醒しやすい条件としては十分だったんじゃないか。

    ニュータイプが殺し合いの戦争の中でお互いに理解しあえる存在になる、それがつまり非戦だと思う。